2015年4月7日火曜日

夏目漱石 『坊っちゃん』 03-02

夏目漱石 『坊っちゃん』 三
Soseki Natsume Botchan

 三時間目も、四時間目も昼過ぎの一時間も大同小異であった。



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 三時間目も、四時間目も昼過ぎの一時間も大同小異であった。最初の日に出た級は、いずれも少々ずつ失敗した。教師ははたで見るほど楽じゃないと思った。授業はひと通り済んだが、まだ帰れない、三時までぽつねんとして待ってなくてはならん。三時になると、受持級の生徒が自分の教室を掃除そうじして報知しらせにくるから検分をするんだそうだ。それから、出席簿しゅっせきぼを一応調べてようやくおひまが出る。いくら月給で買われた身体からだだって、あいた時間まで学校へしばりつけて机とにらめっくらをさせるなんて法があるものか。しかしほかの連中はみんな大人おとなしくご規則通りやってるから新参のおればかり、だだをねるのもよろしくないと思って我慢がまんしていた。帰りがけに、君何でもかんでも三時すぎまで学校にいさせるのはおろかだぜと山嵐に訴えたら、山嵐はそうさアハハハと笑ったが、あとから真面目まじめになって、君あまり学校の不平を云うと、いかんぜ。云うならぼくだけに話せ、随分ずいぶん妙な人も居るからなと忠告がましい事を云った。四つ角で分れたからくわしい事は聞くひまがなかった。

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