森鴎外 『高瀬舟』
Mori Ōgai Takasebune
その日は暮れ方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪……
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その日は暮れ方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の
庄兵衛はまともには見ていぬが、始終喜助の顔から目を離さずにいる。そして不思議だ、不思議だと、心の内で繰り返している。それは喜助の顔が縦から見ても、横から見ても、いかにも楽しそうで、もし役人に対する気がねがなかったなら、口笛を吹きはじめるとか、鼻歌を歌い出すとかしそうに思われたからである。
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【下京(しもきょう/しもぎょう)】
京都の市街地の南半分の地区の呼び名.北部は上京(かみぎょう)と呼ばれる.歴史的に境目は三条通だが,現在の行政区分では四条通以南八条通までが下京である.
【舳/舳先】
船首.船の前端部分.みよし.舳(へ).
船尾は「艫(とも)」
【夜舟/夜船】
夜行の船.「舟」は手で漕ぐような小型のもの.
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