Natsume Sōseki
Nihyaku-tōka(The 210th Day)
「あの隣りの客は元来何者だろう」と圭さんが
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「あの隣りの客は元来何者だろう」と圭さんが
「隣りの客どころじゃない。その顔は不思議だよ」
「もう済んだ。ああ好い心持だ」と圭さん、手拭の
「ああいい心持ちだ」と圭さんは波のなかで云った。
「なるほどそう遠慮なしに
「あの隣りの客は
「君が華族と金持ちの事を気にするようなものだろう」
「僕のは深い原因があるのだが、あの客のは何だか
「なに自分じゃあ、あれで分ってるんだよ。――そこでその小手を取られたんだあね――」と碌さんが隣りの
「ハハハハそこでそら
「なにあれでも、実は
「海賊らしくもないぜ。さっき
「木枕をして寝られるくらいの頭だから、そら、そこで、その、小手を取られるんだあね」と碌さんは、まだ真似をする。
「竹刀も取られるんだあねか。ハハハハ。何でも赤い表紙の本を胸の上へ
「その赤い本が、何でもその、竹刀を落したり、小手を取られるんだあね」と碌さんは、どこまでも真似をする。
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